💴 お金(慰謝料・養育費)

婚姻費用とは|別居中にもらえる生活費の相場と請求

公開 2026年6月8日・約7分で読めます・リコログ編集部

本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別のご事情については弁護士等の専門家にご相談ください。

別居を考え始めたとき、「家を出たら、生活費はどうなるのだろう」という不安は多くの方が抱えるものです。婚姻費用は、こうした別居中の暮らしを支えるための制度ですが、言葉自体に馴染みがなく、いくらもらえるのか見通しが立てにくいのも事実です。この記事では、婚姻費用とは何か、相場をどう見積もるのか、どう請求するのかを、できるだけ冷静に整理します。なお、ここで挙げる金額はあくまで一般的な目安であり、あなたのケースの結論を約束するものではありません。

婚姻費用とは何か

婚姻費用とは、夫婦が婚姻関係を続けている間、互いの生活を支え合うために分担すべき費用のことです。実務では「婚費(こんぴ)」と略されることもあります。具体的には、衣食住の費用、子どもの養育費・教育費、医療費などが含まれるとされています。

ポイントは、別居していても、離婚が成立するまでは夫婦であるという点です。一般に、夫婦には収入の多い少ないにかかわらず互いの生活を支える義務(婚姻費用の分担義務)があるとされ、別居中であっても、収入の多い側が少ない側へ生活費を分担するのが原則的な考え方です。

養育費と混同されやすいのですが、両者は次のように区別されます。

  • 婚姻費用:婚姻中(別居中を含む)に、配偶者と子どもの生活を支えるための費用
  • 養育費:離婚後に、子どもの養育のために支払われる費用

つまり、離婚が成立するまでの期間に関わるのが婚姻費用、離婚後に関わるのが養育費、という整理になります。

婚姻費用の相場の考え方

婚姻費用の金額は、当事者の話し合いで自由に決められますが、合意できない場合は家庭裁判所が**「婚姻費用算定表」**を目安に判断するのが一般的とされています。算定表は、次の3つの要素から金額の目安を導く仕組みです。

  1. 支払う側(義務者)の年収
  2. 受け取る側(権利者)の年収
  3. 子どもの人数と年齢(0〜14歳か、15歳以上かで区分)

一般的な傾向として、支払う側の年収が高く、受け取る側の年収が低いほど、また子どもの人数が多いほど、金額は上がります。あくまで目安ですが、イメージをつかむために、子どもが1人(0〜14歳)の場合の月額の傾向を整理すると次のようになります。

支払う側の年収受け取る側の年収婚姻費用の目安(月額・傾向)
400万円0円8万〜10万円程度
600万円0円12万〜14万円程度
600万円100万円10万〜12万円程度
800万円0円16万〜18万円程度
800万円200万円12万〜14万円程度
上記の金額は算定表の一般的な傾向を整理したもので、最低額や上限を保証するものではありません。実際の金額は、年収の算定方法(給与か自営かなど)、子どもの年齢、特別な医療費・教育費の有無といった個別事情で変わります。具体的な見積もりは、最新の算定表をもとに弁護士など専門家にご確認ください。

金額が動きやすいポイント

同じ年収でも金額に差が出るのは、次のような事情が考慮されるためです。

  • 自営業か給与所得者か:収入の計算方法が異なるため、同じ「年収◯◯万円」でも結果が変わることがある
  • 子どもの年齢:15歳以上は教育費が増えるとされ、目安額が上がりやすい
  • 私立学校の学費や高額な医療費:算定表の標準を超える費用があると、別途考慮される場合がある
  • 住宅ローンや家賃の負担:どちらがどの住居費を負担しているかで調整されることがある

婚姻費用はいつから・いつまでもらえるか

婚姻費用を考えるうえで、見落とされがちなのが**「いつから」**という時点の問題です。

一般に、婚姻費用は請求の意思を相手に明確に伝えた時点からの分が認められやすいとされています。具体的には、内容証明郵便が相手に届いた日や、調停を申し立てた月などが基準になることが多いと言われます。別居してから何か月も経って初めて請求した場合、別居開始までさかのぼって全額が認められるとは限らない点に注意が必要です。

このため、別居や生活費の不足が始まったら、早めに請求の意思を残しておくことが現実的に重要になります。別居前後にやっておきたいことの全体像は、別居前にやっておくこともあわせてご覧ください。

支払いの終わりは、原則として離婚が成立する日、または別居が解消されて同居に戻る日までとされています。離婚後は、子どもがいる場合は養育費に切り替わる形になります。

婚姻費用の請求方法

婚姻費用の請求は、いきなり裁判になるわけではなく、段階を踏んで進むのが一般的です。流れを整理します。

  1. 話し合い(協議):まずは当事者同士、または書面で金額を取り決める
  2. 内容証明郵便での請求:話し合いに応じない場合、請求の意思と時期を客観的に残す
  3. 婚姻費用分担請求調停:合意できなければ家庭裁判所に調停を申し立てる
  4. 審判:調停でも合意に至らない場合、裁判所が金額を判断する

調停の進み方そのものについては離婚調停の流れも参考になります。なお、婚姻費用の調停は離婚調停とは別の手続きで、離婚が決まる前でも単独で申し立てられるとされています。

取り決め後に支払われない場合

調停や審判で金額が決まった後も支払われないときは、一般に次のような手段が考えられるとされています。

  • 履行勧告・履行命令:家庭裁判所から相手に支払いを促してもらう
  • 強制執行:給与や預貯金などの差押え

調停調書や審判書といった取り決めを示す書面があると、こうした手続きを取りやすいとされています。逆に、口約束だけだと後から「言った・言わない」になりやすいため、合意した内容は書面に残しておくことが大切です。

請求の土台になる「記録」を整えておく

婚姻費用の話し合いや調停では、生活費が実際にいくら渡されていたか、別居や請求の意思をいつ伝えたかといった事実が、しばしば論点になります。「先月は3万円しか渡されなかった」「別居を伝えたのは何月何日か」といった点が曖昧だと、主張の説得力が弱まりがちです。

だからこそ、感情論ではなく、いつ・いくら・どのようなやり取りがあったかを事実として残しておくことが、後の相談や請求の土台になります。

リコログでは、こうしたお金にまつわる出来事を、日時・金額・言動といった5W1Hの事実として数タップで残せます。記録は相談前のメモ(陳述書のような形のPDF)として時系列に整理でき、別居や離婚を決める前の段階でも「いま起きていることを事実として残しておく」ことから落ち着いて始められます。生活費を渡してもらえない状況が続いている場合は、生活費を渡さない証拠の残し方も参考になります。

婚姻費用を考えるときの注意点

  • 金額は算定表どおりとは限らない:協議では当事者の合意で決まるため、目安より高くも低くもなり得ます。
  • 早めに請求の意思を残す:請求が遅れると、過去の分がさかのぼって認められにくいことがあります。
  • 養育費とは別の制度:婚姻費用は離婚成立までの費用で、離婚後の養育費とは区別されます。
  • 安全の確保を最優先に:生活費を渡さない言動に加えて身の危険を感じる状況がある場合は、お金の問題と切り離して、安全を優先してください。

ここでの説明は一般的な情報であり、法律的な判断を断定するものではありません。個別の見通しや手続きについては、弁護士など専門家にご相談ください。

まとめ

  • 婚姻費用とは、別居中を含む婚姻期間に、夫婦が互いの生活を支え合うために分担する費用
  • 相場は、双方の年収と子どもの人数・年齢から「婚姻費用算定表」で目安を導くのが一般的
  • 一般に、請求の意思を伝えた時点からの分が認められやすく、早めに意思を残すことが大切
  • 請求は、話し合い→内容証明→調停→審判と段階を踏む。取り決めは書面に残す
  • 生活費の額ややり取りの時期は論点になりやすいため、事実を時系列で記録しておく
  • 金額の見積もりや具体的な手続きは、最新の算定表をもとに弁護士に相談を

よくある質問

婚姻費用はだいたいいくらが相場ですか?

一概には言えませんが、夫婦双方の年収と子どもの人数・年齢から算定表で目安を導くのが一般的とされています。たとえば支払う側の年収が高く受け取る側が低いほど、また子どもが多いほど金額は上がる傾向があります。具体的な額は個別事情によるため、弁護士など専門家にご相談ください。

婚姻費用はいつから請求できますか?

一般に、請求の意思を相手に明確に伝えた時点(内容証明の到達や調停申立て時など)からの分が認められやすいとされています。別居後さかのぼって全額が認められるとは限らないため、別居や生活費の不足が始まったら早めに請求の意思を示しておくことが大切です。

専業主婦(主夫)でも婚姻費用はもらえますか?

一般に、収入の有無にかかわらず夫婦には互いに生活を支え合う義務(婚姻費用の分担義務)があるとされています。収入が少ない、または無い側が、多い側に対して分担を求めるのが基本的な考え方です。判断に迷う点は専門家に個別にご確認ください。

相手が婚姻費用を払ってくれない場合はどうすればよいですか?

まずは内容証明などで請求の意思を残し、応じない場合は家庭裁判所の婚姻費用分担請求調停を申し立てる方法が一般的とされています。取り決め後も支払われないときは履行勧告や強制執行といった手続きが考えられます。具体的な進め方は弁護士にご相談ください。