面前DVとは|子どもの前での暴言・暴力が与える影響
本記事は一般的な情報提供であり、法的助言ではありません。個別のご事情については弁護士等の専門家にご相談ください。
「夫婦のことだから子どもには関係ない」「子どもの前ではあるけれど、手を上げているのは自分にだけ」——そう考えてやり過ごしてきた方もいるかもしれません。けれど、子どもの前での暴言や暴力は、子ども自身に直接向けられていなくても、その心に影響を与え得るとして「面前DV」と呼ばれ、近年は児童虐待の一つとして整理されています。この記事では、面前DVの定義、一般に指摘される子どもへの影響、そして迷ったときに今日からできる記録のしかたまでをまとめます。
面前DVとは
面前DVとは、一般に子どもの目の前で配偶者やパートナーに暴言・暴力をふるうなど、子どもにDVを見聞きさせる行為を指すとされています。「面前」は「目の前」の意味で、子どもがその場面を見ている場合だけでなく、別室で怒鳴り声や物音を聞いている状況も含まれ得ると説明されます。
ここで押さえておきたいのは、子ども自身が直接たたかれているわけではないという点です。暴力や暴言の矛先は配偶者に向いていても、その様子を子どもが繰り返し見聞きすることで、子どもの心に負担がかかり得る——この理解が面前DVという言葉の前提になっています。DV全体のなかでの位置づけはDVの種類でも整理しています。
面前DVには、たとえば次のような場面が含まれ得るとされています。
- 子どもがいるリビングで配偶者を大声で怒鳴りつける
- 子どもの目の前で物を投げる、配偶者を突き飛ばす
- 子どもが寝ている隣室から、暴言や物が壊れる音が聞こえている
面前DVは児童虐待にあたるとされる
面前DVを理解するうえで欠かせないのが、児童虐待としての位置づけです。一般に、児童虐待防止法では、子どもの前で配偶者などに暴力をふるうことは、子どもへの心理的虐待の一類型として扱われるとされています。直接子どもに向けられた行為でなくても、子どもの心を傷つけ得るという考え方に基づくものです。
| 区分 | 一般的な説明 | 面前DVとの関係 |
|---|---|---|
| 身体的虐待 | 子どもの身体に直接危害を加える | 面前DVは原則ここには含まれないとされる |
| 心理的虐待 | 言葉や態度で子どもの心を傷つける | 面前DVはここに位置づけられるとされる |
| ネグレクト | 養育の放棄・怠慢 | 別の類型として整理される |
| 性的虐待 | 子どもへの性的な行為 | 別の類型として整理される |
警察がDV事案に対応した際、その場に子どもがいれば、心理的虐待のおそれがあるとして児童相談所へ連絡(通告)される運用が広がっているとも説明されます。ただし、個別の事案がどう判断・対応されるかは状況によって異なるため、具体的な扱いは児童相談所や弁護士などの専門機関にご相談ください。
子どもに与え得る影響
面前DVが子どもに与える影響については、さまざまな指摘があります。大切なのは、「影響が必ず出る」と断定することでも、「気にしすぎ」と切り捨てることでもなく、一般に語られている可能性を落ち着いて知っておくことです。年齢や状況に応じて、次のような形で表れ得るとされています。
- 情緒面:不安や緊張が続く、気分の落ち込み、表情が乏しくなる
- 行動面:落ち着きのなさ、夜泣きや夜驚、赤ちゃん返り、攻撃的な言動
- 身体面:頭痛・腹痛など、はっきりした原因のない体調の不良
- 対人面:人の顔色をうかがう、自分の気持ちを言いにくくなる
注意したいのは、子どもは不安を言葉にしにくいという点です。「大丈夫」と言っていても別の形で表れていることがあると指摘されており、表面上の落ち着きが影響のなさを意味するとは限らないと語られます。モラハラ的な言動が家庭にある場合の影響は、モラハラの子どもへの影響でも整理しています。
なお、ここで挙げたのはあくまで一般論であり、医学的・心理的な評価は専門家の領域です。気になる様子があるときは、自己判断で結論づけず、小児科や自治体の子育て相談、児童相談所などに相談する選択肢があります。
迷ったときにできること|事実を記録する
「これは面前DVにあたるのか」「子どもに影響が出ているのか」を、その場で一人で判断しきるのは簡単ではありません。だからこそ、判断を急ぐ前に、起きた事実を記録しておくことが現実的な一歩とされています。
記録のコツは、感情の評価ではなく、5W1H(いつ・どこで・誰が・何を・どのように)で事実を残すこと、そしてその場に子どもがいたかどうかを書き添えておくことです。
| 項目 | 記録の例 |
|---|---|
| 日時 | 2026年6月8日 20時頃 |
| 場所 | 自宅リビング |
| 言動 | 夕食中、配偶者が大声で「お前のせいだ」と怒鳴り、コップをテーブルに強くたたきつけた |
| 子どもの様子 | 同席していた5歳の子が泣き出し、その後しばらく黙り込んでいた |
| 自分への影響 | 怖くてその場では言い返せなかった |
| 証拠の有無 | なし(音が大きい時間帯のため、次回から録音を検討) |
こうした記録は紙のノートでも構いません。リコログを使えば、出来事を5W1Hで残し、相談前のメモ(陳述書PDF)として整理することもできます。離婚を決める前の段階でも、「あとで自分や子どもを守るための記録」を今日から始めておけます。子どもへの影響と離婚を考える際の整理は、子どもへの影響と離婚もあわせてご覧ください。
ただし、記録を取る際は安全が最優先です。録音機器の管理やスマホの中身を見られるリスクなど、かえって危険を高めないかにも目を配り、無理のない範囲で行ってください。
まとめ
- 面前DVとは、子どもの前で配偶者などに暴言・暴力をふるい、子どもに見聞きさせる行為とされる
- 子ども自身に直接向けられていなくても、心に影響を与え得るという理解が前提にある
- 児童虐待防止法上、心理的虐待の一類型として扱われるとされる(個別判断は専門機関へ)
- 子どもへの影響は情緒・行動・身体・対人など多様に表れ得るが、断定も軽視もしない姿勢が大切
- 子どもは不安を言葉にしにくく、表面上の落ち着きが影響のなさを意味するとは限らない
- 判断を急ぐ前に、子どもの同席を含めた事実を5W1Hで記録しておくことが現実的な一歩
- 危険を感じる言動があれば、安全な場所から相談を
よくある質問
面前DVとは何ですか?
一般に、子どもの目の前で配偶者やパートナーに暴言・暴力をふるうなど、子どもにDVを見聞きさせる行為を指すとされています。直接子どもに手を上げていなくても、子どもの心に影響を与え得るとして、児童虐待の一つに位置づけられています。
面前DVは児童虐待にあたりますか?
児童虐待防止法上、子どもの前で配偶者などに暴力をふるうことは、心理的虐待の一類型として扱われるとされています。怒鳴り声や暴言を聞かせる場合も含まれ得ると説明されますが、個別の判断は児童相談所や弁護士などの専門機関にご相談ください。
子どもは何も言わないので影響はないのでは?
一般に、子どもは不安を言葉にしにくく、表面上は普段どおりに見えることもあるとされています。落ち着きのなさ、夜泣き、体調の変化など別の形で表れることもあると指摘されており、見えにくさが影響がないことを意味するわけではありません。
面前DVの状況はどう記録すればよいですか?
いつ・どこで・どんな言動があり、その場に子どもがいたかを、5W1Hの事実として時系列で書き留めておく方法があります。感情の評価ではなく具体的な事実を残すことが、後で相談する際に役立つとされています。